出典:『オペ看』 コミック2巻より
「最近医療ドラマでよく見るオペ室看護師。実際どういうことしてるんだろう。おすすめマンガとかないかなー?めっちゃ読みたい。
いま看護学生です。
オペ室看護師にも興味があるので何かイメージできるマンガの情報が知りたいです。」
こういった疑問に答えます。
・オペ室看護師でおすすめするマンガは『オペ看』です
・マンガ『オペ看』のいいところ、悪いところ
・手術室看護師に向いている人、向いていない人
この記事を書いているの私は、オペ室看護師歴8年。
現在は約800床の病院でオペ看(=オペ室看護師の略)として働いています。
オペ室の状況に関して、実体験に基づいて解説します。
Contents
オペ室看護師がおすすめするマンガは『オペ看』です
結論として、多くの医療マンガの中でここまで手術室看護師をメインで書かれたマンガは今までありません。
しかも、笑えて、泣けて、しかもタメになります。
この『オペ看』を使って新人研修してもいいんじゃないかってほどクオリティーは高いです。
『オペ看』を読むだけでオペ室看護師のはたらきを基本的に理解できてしまいます。(マジです)
【よくある質問①】:手術室看護師ってなにしてるの?ー器械出し看護師、外回り看護師について
ざっくりと手術室の看護師の役割を話していきたいと思います。
大きく2つに分けられます。
術前(手術前)より必要な器械や材料を確認し効率よく術者に手渡し、清潔操作を遵守しながら手術の流れを把握し、進行を妨げないように介助します。
五感をフル活用して、術野を見て、術者の声を聞いて、状況を把握して、先を読む!!
エキスパートの器械出し看護師は先を読む力がとても長けています。
役割はとても多いです。
手術を効率よく進行するために、外回り看護師の果たす役割は患者さんの安全・安楽を守るだけでなく、他職種とのマネジメントも必要になります。
そのため、外回り看護師は器械出し看護師以上にその力量やセンスが求められます。
術前訪問(手術前の患者さんに説明を行うこと)、麻酔のかかった患者さんの体位固定(手術中での姿勢の保持)や出血量測定、体温管理、他職種との調整(外科医、麻酔科医、臨床工学技士、放射線技師など)、術後訪問(手術後の看護評価を行う)
と一部あげるだけでもこれだけあります。
【よくある質問②】:手術室って患者さんすぐ麻酔にかかって、手術室に看護ってあるの?
もちろんあります。
「手術看護」は手術室内だけでなく、患者さんが手術を選択した時から退院まで周術期全体を通して行うものです。
なので、タイムリーに関われるのは手術室看護師です。
患者さん、家族の心理を理解した上で、より質の高い看護を提供することも求められています。
また、その一方で患者さんと話を傾聴するだけが看護ではありません。
患者さんが全身麻酔で眠っている間に
患者さんの代弁者として体位(手術中の姿勢)の保持や体温管理を行うことが外回り看護師の大切な役割です。
オペ室に看護がないって思ってしまう理由
大きく2点あると考えます。
・手術看護は時間の短い看護であるという特徴がある
・手術室の看護診断はリスク型看護診断(※)がほとんどである
※リスク型看護診断ーリスクを起こす恐れがある場合に用いる看護診断のことで患者を観察してその診断の危険因子はあるが診断指標(=実際の症状)がない場合に用いる。
なんのこっちゃ!と思われますが、
要はもしかしたらこんなこと(例:周術期体位性身体損傷リスク状態、体温平衡異常リスク状態など)
が起きるかもと予想される看護診断のことです。
つまりは、予防の看護であり、リスクを回避するためのものであります。
ほとんどはもともと発生しないものや術後しばらくすれば消失してしまいます。
それにより、オペ室は病棟での看護に比べ、味気ない(看護がないように感じる)印象を感じるのです。
オペ室では病棟に比べ非常に短い看護看護過程を展開します。
そしてその中の看護過程はリスク型看護診断であり、そのほとんどはもともと発生しないまたは術後しばらくすれば消失してしまうのです。
だから、手術室には看護がない、と感じてしまう。
このマンガの特徴(実際自分が働いて感じるリアルな部分を解説!!)
出典:『オペ看』 コミック3巻より
『オペ看』の魅力を引き出すためにこのマンガの特徴をいいところ(5つ)と悪いところ(3つ)という視点でまとめていきたいと思います。
・オペ室の描写がしっかり作り込まれている!
・麻酔科医との連携も結構リアル!
・外科医の特徴がよく表現されている!
・インシデントの対策や傾向の学びになる!
・患者さんの手術に対する葛藤の場面もしっかり描かれている!
・セツ子(あき子の新人教育者)が厳しすぎるというかアウト。
・看護師長が一体なにを管理しているかわからない。
・外回り看護師が誰1人アイシールドをつけていない。
いいところ
オペ室の描写がしっかりと作り込まれている!
無影灯(手術で使用するライト)や麻酔器、手術ベッド、器械台に至るまで手術室の環境整備はとても正確に描かれています。
扉も足で開ける場面もほんとそのまま。
麻酔科医との連携も結構リアル!
外回り看護師は他職種と働く調整役ですが、一番関わるのが麻酔科医です。
この麻酔科医のキャラが結構強くて(独断ですが)上手く立ち回るのも外回り看護師の力量の一つです。
あき子が初めての外回りをするときに一緒についた麻酔科医の影山先生のように
ほんと嫌味しか言わない人もいます。
何回か出てくる女性の麻酔科の南條先生はもはや神キャラ。
うちの病院にもぜひ来てほしいです。(切望)
外科医の特徴がよく表現されている!
外科医の手術に対する重圧は私の想像以上のものであると理解はしています。
マンガ同様、私も手術でガーゼをカウントするときに外科医が協力してくれない
という状況に遭遇したことがあります。
外科医の多くはとてもせっかちですぐイライラする傾向があります。
とくに手術のテンポを乱されることをやはり一番嫌いますね。(ほしい器械がなかなか出てこないなど)
早く手術を始めたい外科医と患者さんの体位(手術中の患者さんの姿勢)の調整を入念にしたい外回り看護師の間でいつも手術開始前にバトルが繰り広げられるのは手術室あるあるです。
ただ、患者さんを安全・安楽に手術を無事に終わらせるという目的はどの職種も同じです。
お互いが協力しあえる関係を構築していくのがより良いチーム医療であると考えます。
インシデントの対策や傾向の勉強にもなる!
あきこが自動吻合器のカートリッジを交換できず破壊!!する場面や、ガーゼカウントの一致せず悪戦苦闘する場面は
多かれ少なかれ手術室看護師が必ず経験します。
(あきこがカートリッジを上手く外せない時の焦り様はとても共感できます。)
器械カウント・ガーゼカウント(体内に遺残がないかをするためのチェック)は手術室看護師のとても大切な仕事の一つです。
手術によってはガーゼ(出血を拭うもの薄いタオル)が100枚以上も出ることがあります。
ガーゼカウントをしているときは結構緊張する場面です。
患者さんの手術を受けることに対する葛藤もしっかり描かれている!
大動脈解離の患者さんのI C(=インフォームド・コンセント)(※)をする心臓血管外科副部長城田先生の場面です。
※I C(=インフォームド・コンセント):医師が手術の説明をし、患者の同意を得ること。
手術適応の人が必ず手術をするとは限りません。
手術をするかしないかは、最終的には患者さん一人一人が決定するのであり、医師が無理に強く勧めることはありません。
手術は病気が治すことを前提に行うものですが、その反面リスクも伴います。
(最悪な場合は死に至ることもある。)
ですから私たち医療従事者は患者さんの声にしっかり耳を傾けなければならないと思うのです。
私が以前担当した患者さんで手術について前日まで悩んでいて、最終的に当日手術を中止した方もいました。(既に手術についての同意書も取った後でした。)
私にとっては手術は日常である場所ですが、患者さんにとっては人生の大きなイベントである、という当たり前のことをこのシーンは思い出してくれます。
悪いところ(ここが良ければもっといい!!ここは誤解しないでほしい)
セツ子は(あきこの新人教育担当者)はかなりやばい先輩の部類に入る。
(このあきことセツ子のやりとりをギャクマンガと捉えればもちろん楽しめます!)
厳しく教え込む、というセツ子のあきこへの指導スタイルはなんか昭和的な雰囲気(スポーツ根性)があり、とてもいやーな印象を受けました。
また、あきこの就職初日にアンプタ(四肢切断術)をしていますが、
これは結構ベテランの手術室看護師の人でも苦手な方が多いです。
(マンガでも描かれていますが、本当にグロテスクです!!)
一般的には新人看護師は必ず最低でも1−2週間程度は研修を行います。(内容は各施設によって異なりますが)
とくに学生のときに手術室の実習をしてるしてないの個々の差はとてもあるからです。
私の場合は、半日だけオペ室で見学したのみでした。(橈骨遠位端骨折に対してのORIFでした。)
いきなり手術に放り込むのは流石にありませんのでどうかご安心を。
オペ室看護師長がなにを管理しているかよくわからない。
普段ナース姿でステーションにいて、スタッフみんなに手術の配置を伝えているベテラン看護師が蒼井看護師長です。
新人スタッフのあきこに対しての対応が結構厳しめである印象を受けます。
セツ子が急に休んだときにあきこが1人で器械出し看護師として手術に臨みますが、どうしてもサポートが必要な状況です。
案の定、自動吻合器のステープラーの外し方がわからず、破壊して手術を滞らせます。
これは管理側(看護師長)のミスです。
師長としては他の先輩(あきこの指導役)をつけるなどして対応するべきでした。
もし自分が患者であったらこの病院で手術したくありません。
また、実際には指導担当者であっても勤務の関係などもあり、
基本的には新人スタッフの指導にはいろんな人(先輩)が受け持ちます。
個人的には手術室看護師の宮田さんの指導などの描写も観たかったです。(セツ子との対比として)
しかし、この蒼井看護師長がダメダメかと言えば全くそんなことはありません。
むしろ良いところも結構あります。
例として挙げるなら
●ガーゼカウントの件(器械出しだったセツ子がインシデント起こしてしましった回想シーン)で看護師の忠告を無視した外科医を厳重に注意している場面
●セツ子が病気になり手術を受けることを打ち明けたときにしっかりと傾聴することいちスタッフのことに親身に寄り添う姿
の特に2点はとても共感できました!!
師長は患者さんやスタッフに対しての想いを汲み取る力がめちゃくちゃ高い人というのがこのマンガでの特徴です。
ただ、手術室での運営やスタッフの管理の部分もあったら、このマンガの奥行きが一層上がったじゃないかなと思いました。
外回り看護師が誰1人アイシールドをつけていない。
アイシールド(血液被曝を避けるために眼を保護する必需品)はしっかりつけないと血液感染をします。
ただ、一つ。
器械出し看護師同様、外回り看護師もアイシールドは必ずつけることが大切です。
オペ室看護師に向く人、向かない人(あくまで個人的な意見!!)
出典:『オペ看』 コミック3巻より
正直、あんまり関係ないです。
自分の個人的な経験で言えば、手術室希望ではなかった自分(物覚えも器用でもない)もなんだかんだでそれなりにできるようになってます。
ときには辛く、辞めたいときもありましたが、先輩や同期のおかげで今もなんだかんだ働いています。
そこで思ったのは、新人研修をするようになってどうしても個人差はありますが、結局経験に勝るものはありません。
日々の目の前の仕事をコツコツ積み上げている人は最初はうまくいかなくてもメキメキとスキルは自ずと上がっていきます。
なので、オペ室看護師に興味がある人はぜひ進んでほしいです。
ただ、こんな人は向かない(少し対策が必要な人)場合もあります。
以下のことをチェックしてみてほしいです。
○手がすぐ荒れてしまう
○患者さんとじっくり話すのが好きだ
○血や臓器を見ると気分が悪くなる
手がすぐ荒れてしまう
もともと肌が弱い体質の方は肌荒れが一層ひどくなります。
特に器械出し看護師をする時の手洗いの消毒はかなり強いためです。
対策としては、師長と相談して基本的には外回り看護師として専念してはたらくといいかなと思います。
ただ、自分が器械出し看護師をどうしてもやりたいと思っている方は自分が肌荒れに強いかどうかは一度確認しておくと良いです。
患者さんとじっくり話すのが好きだ。
正直、申しますとやはり手術室では患者さんと話す時間はほとんどありません。
全身麻酔を受ける患者さんは入室して10−15分後には麻酔で入眠してしまいます。
私の学生時代の経験として
慢性期の看護実習などでを患者さんと話をしていく中で
患者さんのニーズを捉えていくことのやりがいや喜びも
実感している身からするとそこは少し味気ない気がするのは本音です。
ただ、手術室看護師には手術を安全、安心に行うことが求められています。
これが何よりも第一の優先課題であると常に思います。
マンガでの一コマに
退院する患者さんがあきこの担当の方であいさつをしたが全く患者さんはあきこのことを覚えていなかったという場面、がありました。
実際、私の経験でも手術後に患者さんの病棟に伺って
手術室でのことを聞いても半分くらいの人はほとんど覚えていません。
オペ室看護師は縁の下の力持ち、つまりは裏方に徹する、
という働き方が自分で合っているか確認してみるといいかもしれません。
血や臓器を見ると気分が悪くなる
大体は慣れます。
ただ必ずインターンシップなどに参加して自分の適性を確認することが重要ですね。
これも経験則ですが、病院見学でみられる学生の方の10人に1人程度は手術のモニターや場の雰囲気で体調を悪くなってしまう印象があります。
まとめ
いかがでしたか。
マンガ『オペ看』について紹介させてもらいつつ、ざっくりと手術室の紹介もさせてもらいました。
結局、『オペ看』最高なマンガです。
もし気に入ったらぜひ親やともだち、恋人などにこのマンガを読んでほしいと思います。
なかなか伝わらないオペ室看護師の仕事の大変さを理解してもらえること、間違いありません。
【参考文献】
『手術室に配属ですか?!』(メディカ出版)2019、監修:廣瀬宗孝
『手術看護』(医歯薬出版株式会社)2019、草柳かほる他
『周術期における看護管理』(2019年関東甲信越セミナー)、井上由子
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