著作集全3巻中の2巻目。ナイチンゲールが生涯をかけて研究した病院と病院の組織とはどのようなものかが書かれた『病院覚え書』をはじめ、一人前の看護婦になるための教育の必要性やそれに対する金銭についてなど書かれた『救貧院病院における看護』、『看護婦の訓練と病人の看護』などがある。従来の看護をまったくあたらしいものに作り上げようとするナイチンゲールの情熱をこの書からも読み取ることができる。
本の紹介文
こんにちは、パパdeオペ室ナースです。
今回は著作集二巻目を取り上げました。
とくに『病院覚え書』について。
この論文では、ナイチンゲールの換気や空間の重要性について余すことなく論じています。
とくに、ナイチンゲール自身が経験したスクタリでの病院での死亡率の高さを引き合いに出してます。
患者が狭く密集された場所で空気が悪くなったことでの悪臭や細菌の感染が死を早めた、と書かれています。
当時はまだ微生物学が発展していないかったため、丹毒について空気感染によるものと書かれています。(実際は接触感染によるもの)
そのようにナイチンゲールの清潔に関する知識は現代ではやや曖昧ではありますが、換気の重要性、空間を広げることによる接触感染を未然に防ぐなどの考察といま読んでも鋭いことにとても感心させられます。
それを知るだけでも読みものとしては充分すぎるを感じます。
また、他の論文では看護資格を認めない記述も見られます。ナイチンゲールの資格に頼って勉学に励まないものや金銭目的で看護婦になるものを厳しく非難する批判をしています。
そのようなナイチンゲールの看護婦像を知る上でもこの本は読み応えがあります。
是非読んでみてください。
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この本でビビッときた文章
・手術患者の場合、病院の衛生状態がないがしろにされているがゆえの直接的な証拠が出ており、その事実を認めないことが原因で、多数の人命が犠牲にされている。(p197)
→それでは、いったいそうした結果をもたらす病院の欠陥とは具体的にどういうことなのであろうか?
・私はすぐにこういいたいーそうした悪の大部分をもたらす原因となるものは、病院の位置と設計上の欠陥、およびそれらに付随する不完全な換気と過密であるーと。(p199)
・病気の蔓延を説明するものとしての「接触伝染」という考え方は、衛生上の配慮が無視されたためおびただしい数の人々が伝染病におそわれ、人々は自然の法則が自分たちを守ってくれると思うのをやめざるをえなかった、そうしたときに採り入れられ始めた。(p200)
・病院によっては、いわゆる「伝染病」のための病室を別棟に設けているが、実際にはそのように考えねばならない病気はないはずである。(p202)
・この事実に関して何か確証がほしいというのであれば、ひとつ屋根の下にいまだかつてないくらい多数の患者を一時につめこんだ病院におけるすさまじい死亡率をあげよう。それはスクタリの病院のことである。このあまりにも有名な例は、ある時期、2500人もの傷病者を収容していたその病院で、5人のうち2人はなくなっている、というものである。(p204)
・病院の場所を決定する要素はつぎのようである。
第一に、そして他の何よりも優先させて考えねばならないのは、空気の清浄さである。
第二は、病人や負傷者をそこまで運ぶのが可能かどうかである。
第三にとりあげるべきは、医師および病人の友人たちが通うのに便利かどうかである。(p217)
今日からできる小さなステップ
看護師という免許資格がいまなくなったとしたら自分は看護師としてなにができるのか、なにをしたいのかを考えてみる。
1行まとめ
まだ微生物学についての研究が未熟であった時代の、ナイチンゲールが説く換気や空間の重要性を考察するのはとてもおもしろい。
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