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書評009冊『ナイチンゲール著作集 第三巻』 監修:湯槇ます他 

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女性の社会での働き辛さをつらつらと書き連ねる異色の小論である『カサンドラ』やナイチンゲールの病院で働く見習生たちに送る訓示的でかつ看護の真髄を述べた『看護婦と見習生への書簡(14)』などが含まれている。

本の紹介文

こんにちは、パパdeオペ室ナースです。

ついに著作集3巻目、最終巻となりました。長かった、、、楽しかったけど。

この巻も非常に多くの考察があり、おもしろいです。

中でも私が気になったのは、『カサンドラ』という小論です。

『カサンドラ』は端的に言うと若い女性(当時のナイチンゲール本人)の社会的地位が男性と比べ劣っていることに対する怒り、不条理さ、諦め、絶望感をとうとうと語っている論文です。

ナイチンゲールは男性同様に女性が仕事を続けることはとても困難なことであると語っています。

どんなに情熱があり、知恵があり、倫理的積極性があってもそもそも女性が働くこと自体が特別扱いされていた時代であり、つまらない家事をすることでほとんど時間がとれないのである、とナイチンゲールは嘆いています。

200年前の話です。

なんだか今の日本でもそんなに大きく変わらないですよね。

多少は良くなっていますが。

この本が書かれたのはナイチンゲールが40歳のとき(1860年)です。

ちなみに『看護覚え書き』は(1859年)。

この『カサンドラ』は自費出版であり、あまり広く流通はされていない本でもあります。

他の本とはかなり毛色の異なるナイチンゲールの社会への不満的な要素が含まれていて、とてもおもしろいです。

海外の評者のひとりは、この『カサンドラ』はナイチンゲールが20代のときに構想を練っていたのではないかと考察しています。

それだけ、ナイチンゲールの内面に大きな壁となっていたのだろうと推測できます。

『カサンドラ』はこの暗澹たる思いを連ねたまま終わります。

さらに他の小論を読み進めていくと

なんとこのアンサー小論というものを私はみつけてしましました。

(J−POPみたいですが)

それが、『看護婦と見習生への書簡(14)』に述べられています。

女性はいままでは家庭に縛り付けられていた奴隷だったが、いまでは家庭の導き手であるのです、と言っています。

『導き手』が英語では実際どのようなものであるかはわからないですが、

ナイチンゲール自身、『カサンドラ』を執筆した当時に比べて女性の社会的地位が向上したと実感しているのは理解できます。

ちなみにこの書簡を書いたのはナイチンゲールが80歳の時。

書簡としては最後となっています。

読み終わった時に胸が熱くなる感覚がありました。

『カサンドラ』と『看護婦と見習生への書簡(14)』を併せて読むことを是非おすすめしたいです。

書籍からの引用

・情熱と知性と倫理的積極性とー女性はこの三つをもっているのに決して満足のいくまでそれを実現しえないできました。この冷たい抑制的な因襲的環境では実現されうるはずがありません。(p207)

 

・女性には「子供たちに乳をやる」ことを除いては、邪魔をしてはならないほどに重要な仕事があるはずは《ない》と思われています。そして女性自身もそれを認めその考えを支持する本を書き、自分が何をしても、それは世の中に対しても他人に対してもそんな価値のあることでは《なく》、また女性が「社会的生活の要求」の基本的なものに出会ったとしてもそれは投げ捨てることができるものだと考えることに自らをならしてきたのでした。(p211)

 

・未亡人であること、健康が優れないこと、家計上の必要性、この三つの説明または理由は、女性が職業をもつことを正当化するものだと思われています。ある場合には不屈の精神力だけでこの三つの理由以外でも充分なこともありますが、そういう場合はまれです。(p212)

 

・女性はその生活全般において(誰かが家で朝目覚める前や夜就寝した後を除いて)誰かを怒らせたり気にさわりはしないかと気を使わずに過ごせる、自分のものだといえる時間を30分ほどももち合わせていないのです。(p213)

 

・女性たちは倫理的積極性のゆるぎない、うわべに流されない慈善の大きな世界を夢みています。(p219)

 

・男性と女性の権利と義務は平等であるということが認められていないのは男性ではなくむしろ女性の側なのです。《男性の》運命の影の中にいて、女性は自分自身を主張してはいけませんし、たんに男性を助け補うものとしての立場にいなければならないのです。女性は夫の仕事のために献身します。(p222)

 

・19世紀は(ある言い伝えによると)女性の世紀になるといわれてきました。その伝説の予言の、なんと真実を言い当てていたことでしょう!かつては女性は家庭に縛り付けられた奴隷にすぎませんでした。ところが今では、女性は家庭の導き手なのです。その女性が、傲慢な「男女同権論者」となって、その資格を失うようなことのないようにしようではありませんか。(p454)

今日からできる小さなステップ

職場の周りの人たちにナイチンゲールは、看護の価値観を変えただけでなく、女性の社会的地位の向上にも貢献したことをそれとなく伝えてみる。

1行まとめ

『19世紀は女性の世紀になるはずだ』と語ったナイチンゲールこそ、この時代の強固な男性社会に風穴を開け、体現したのである。

 

ABOUT ME
パパdeナース@オペ室
2013年入職よりずっとオペ室で看護師してます。メンズナースです。男の子の親でもあります。主に仕事や育児についての読書ブログ書いてます。
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