こんにちは、パパでナースです。
今回は【妊婦の生理】についてお話していきます。
妊娠中の麻酔は、母体と胎児の安全性を最優先に考慮する必要があります。
妊娠による身体の変化は、呼吸器系、循環器系、消化器系などさまざまな部分に影響を与え、麻酔においても注意が必要です。
この記事では、妊娠中の麻酔管理において知っておくべきリスクと対処法について解説します。
安全な妊婦麻酔のためのポイントを押さえ、安心して看護ケアを実践できるようになりましょう。
Contents
結論
妊娠中の女性は、様々な身体的変化により麻酔管理が難しくなります。
妊婦の麻酔に対する理解と適切な対応が重要です。
術前診察で、妊娠に伴う臓器の変化や基準値の違いに注意し、緊急時の飲食時間や逆流症状も確認しましょう。
重要な部分:
妊娠に伴う循環器系の変化
呼吸器系への影響
子宮胎盤系の血流調節
消化器系の逆流リスク
腎泌尿器系の機能変化
神経系への影響と麻酔薬感受性
術前診察の重要性
血液凝固系
妊娠中の血液凝固系の変化には、生理的貧血や凝固亢進状態などがあります。
これらは、分娩時の出血防御機構として働く一方で、血栓症やDICのリスクが高まることも。
帝王切開では腰椎麻酔が一般的ですが、出血傾向がある場合は注意が必要です。
まとめ
生理的貧血(Hb11g/dL以下)
凝固亢進状態(フィブリノゲンや第V因子増加)
深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症のリスク増
常位胎盤早期剥離によるDIC発生リスク
術前診察で血液凝固系検査の確認が重要
循環器系
妊娠中の循環器系では、心拍出量が約50%増加し、血圧は安定します。
しかし、妊娠中期以降の仰臥位では、子宮の圧迫により血圧低下や子宮胎盤血流減少が起こります。
術前診察では仰臥位の血圧低下に注意し、子宮左方移動や側臥位を検討することが重要です。
まとめ
心拍出量の増加(約50%)
仰臥位低血圧症候群
妊娠高血圧症候群(PIH)の可能性
子宮左方移動や側臥位の検討
術前診察での血圧低下への注意
呼吸器系
妊娠中の呼吸器系では、分時換気量が約50%増加し、機能的残気量が減少します。
これにより、低酸素に陥りやすくなります。
妊娠末期には気道確保が困難になることがあり、術前診察では慎重な気道評価が重要です。
まとめ
分時換気量の増加(約50%)
機能的残気量の減少
低酸素に陥りやすい状況
気道確保の困難さ
術前診察での慎重な気道評価
子宮胎盤系
妊娠中の子宮胎盤系は、子宮が大きくなり子宮血流も増加します。
しかし、自動調節能がないため、母体の低血圧が胎児血流不足を引き起こす危険性があります。
まとめ
子宮の大きさの増加
子宮血流の増加
自動調節能の欠如
母体低血圧による胎児血流不足の危険性
消化器系
妊娠中は、子宮の圧迫やプロゲステロンの影響で胃食道逆流が起こりやすくなります。
消化管運動の低下や胃内容物の貯留も考慮し、「フルストマック」と認識することが重要です。
術前診察では逆流症状や最後の飲食の時間の確認が必要です。
まとめ
胃食道逆流の危険性
消化管運動の低下
胃内容物の貯留
術前診察での確認事項
腎泌尿器系
妊娠中は、腎血流量の増加によりGFRが約50%増加し、クレアチニン濃度やBUN、尿酸値が低下します。
術前診察では妊婦用の基準値(クレアチニン0.4〜0.6mg/dL)を用い、0.8mg/dLを超えた場合は注意が必要です。
まとめ
糸球体濾過量(GFR)の増加
クレアチニン濃度、BUN、尿酸値の低下
妊婦用の基準値の使用
クレアチニン0.8mg/dL以上で注意が必要
神経系
妊娠中、プロゲステロンやエンドルフィンにより揮発性吸入麻酔薬感受性が亢進し、MACが低下します。
脊髄くも膜下麻酔では、局所麻酔薬量が少なくても麻酔域が上昇しやすい。
術前診察で体重や皮下脂肪の増加、穿刺部位の確認に注意が必要です。
まとめ
揮発性吸入麻酔薬感受性の亢進
脊髄くも膜下麻酔で麻酔域が上昇しやすい
術前診察で体重や皮下脂肪の増加に注意
穿刺部位の確認の難しさ
術前診察の必要性
妊婦に対する麻酔管理は非妊娠状態とは異なる点が多く、その特徴を理解し適切な麻酔を提供することが重要です。
術前診察では、各臓器系の妊娠による変化や基準値の違いに注意し、妊婦に適した麻酔法や術中管理を行うことが求められます。
また、緊急症例においては最後の飲食時間や逆流症状の有無も確認することが重要です。
これらの知識を持ち、妊婦に対して安全で効果的な麻酔管理を提供することが、麻酔科医と情報共有を行っていきましょう。
Q&A
Q1: 妊娠中の女性が麻酔を受ける際、循環器系にどのような影響があるのですか?
A1: 妊娠中は心拍出量や血漿量が増加し、心臓への負担が増大します。
麻酔管理の際は、妊婦特有の循環器系の変化を考慮して適切な血圧管理が重要となります。
Q2: 妊娠中に消化器系に影響があるのはなぜですか?
A2: 妊娠中の消化器系は、子宮の圧迫やプロゲステロンによる食道括約筋の弛緩が原因で胃食道逆流が起こりやすくなります。
術前診察では妊娠中の逆流症状の有無や、緊急症例では終食時間の確認が重要です。
Q3: 妊娠中の神経系の変化と麻酔への影響はどのようなものですか?
A3: 妊娠中はプロゲステロンや分娩時のエンドルフィンによって鎮痛作用が増し、麻酔薬の感受性が亢進します。
脊髄くも膜下麻酔では、妊娠による局所麻酔薬への感受性亢進や生理的脊椎前弯の減少が麻酔域上昇の要因になります。
術前診察で穿刺部位の確認が重要です。
おわりに
いかがでしたか。
妊娠中の麻酔管理は、母体と胎児の安全を守るために緻密な配慮が求められます。
この記事を通して、妊娠中の身体の変化や麻酔リスクを理解し、適切な対処法を学んでいただけたことでしょう。
オペナースにとっても、安全かつ安心な麻酔管理が実現できるよう、知識を活用してください。
これからの臨床現場での対応が、母子ともに安心できるものとなることを願っています。
妊娠中の麻酔はチーム医療の精神で取り組むことが大切です。
参考文献
周術期管理チームテキスト第4版