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書評020冊『発達障害当事者研究』綾屋紗月、熊谷晋一郎(2008)

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本書では、発達障害をもつ綾屋氏の見えてる、聞こえている、感じている世界を小児科医であり脳性まひである共著者の熊谷氏と分析、解明していく。健常者からはみえにくいことで障がい者本人も気づきにくいこの症状を通して、他者とつながることや他者と理解することのヒントが散りばめられている書となっている。

こんな人に読んでほしい

・コミュニケーションをとることに障がいを持つ人の実際の感覚、世界に興味を持つ人

・人と人とのつながりって一体なんだろう、と考えるヒントが欲しい人

・精神科で働くことになった医療従事者

本の紹介文

こんにちは、パパdeナースです。

オペ室一筋で8年目であり、一児の男の子の父親でもあります。

本が読むのが好きで書評ブログを日々少しづつ時間を見つけては書いています。

このブログを通して少しでも多くの人に一人の看護師なりに日々考えたり思ったりしている看護観を発信できたらなと。

今回は、発達障害を持つ氏の日々起きるできごとについてを分析、解明していく本となっています。

一つの例として

健常者

「おなか、すいたー」

    ↓

空腹であると感じる

綾屋氏

多くの体のサイン

(ボーッとするなぁ、動けない、頭がふらふら、血の気が失せるなど)

    ↓

胃のあたりがへこむ 胸がわさわさする 胸が締まる感じがする

    ↓

あれでもないこれでもないと試行錯誤

    ↓

最終的に「これは空腹の状態である」と判断

最初1回読んだだけではなんだかよくわかりませんでした。

正直、頭では理解できてもなんとなく腹落ちしない感覚というのが正しいかもしれません。

それは、おなかへってるって考えたことなかったからです。

自分の中では新しい概念でとても新鮮でした。

氏の空腹という一例をとっただけでもこんなに多くのプロセスが必要であることはこの本を読んでほんとにびっくりしました。

本当に膨大な判断材料があります。

自分の身体の状態を自らが分析、診断して決定していく行為はまさに医者が患者の鑑別診断を行うものに僕には感じました。

このことがおなかがすいた、だけであるならまだしも

日々生活することの多くがこのようなプロセスをたどるので

(本書ではこれをまとめあげと読んでいます)

日常の活動の一つ一つが氏にとってとても大変であることが読んでいてひしひしと伝わってきました。

ここで感じたのは、自分が氏のような発達障害を抱えた人たちはそうですがそれ以外の多くの人たちとの関わりについてです。

この本を読んでいて特に実感したのは、

もし氏が実際に外で歩いていて僕は氏をすれ違ってもおそらく氏をどこにでも健常者と認識するだろうということです。

気づかないし、わからないのです。

実際に話したりすることでもしかしたら気づくことができるかもしれません。

これも衝撃的でしたが、氏本人も自分の障がいに気づいたのは社会人になってからであると書かれていました。

このような障がいのわからなさというのは問題であると。

本人でさえわからず、自分が他の人とできず比べてしまうことで

自分は 甘えているのではないか

    努力が足りないのではないか

    わがままなだけではないか、、、

と思い込んでしまうのです。

それが何十年も続くのです。とても辛いです。

無知とは時としてはとても残酷であるなと。

では、どうすればいいのか。

つまりは、わかりあえない人たちとそのわかりあえなさを共有していくことがいいのだろうと。

その一つの答えとしては、

みんなが自分と同じではないという認識と多くの障がいを持つ人への理解を学ぶことに他ならないのではないかなと思うのです。

これだけ多様性が認められるようになってきた現代において本当の身近な友人、家族との関係ももう一度見直してみるいい機会であるのかなと感じました。

なんかまとまりはないのですが、この本には人と人のつながりの本質的な理解についての学びがありました。

 

この本でビビッときた文章

・従来の自閉症概念に合うように私の体験を編集しなおすことなく、発達障害という大きい枠の中で自由に語ることから始め、その自由な《私語り》を起点に、従来の自閉症概念をずらしていくのが、この本の目的である。(p4)

・私は二年前にアスペルガー症候群という概念を知るまで、自分の体温変化についての感覚が一般的ではないことに気づいていなかった。(p47)

・自分が疲れているかどうかの判断を保留して、「普通」に合わせるために無理を重ねてしまう態度は、外側から見えにくい(したがって自分からも見えにくい)障害をもっている人たちに、共通してみられる傾向のようだ。(p51)

・四歳で初めて集団生活に入ったときから「私、これ、無理だ」とはっきりと悟り、以来、ヒトの集団のなかではつながっている意識をもつことができずに過ごしてきた。今でも、私にはときどき猛烈に「人恋しい」気持ちがやってくるし、いまだに「いったいあの楽しそうな様子とは、中にいるとどういう感じがするものなのだろう」という、楽しそうな集団への素朴で強烈な憧れが湧き起こる。(p123)

・アスペルガー症候群という概念は、はじめの手がかりとして参考にはしたものの、その概念に合うように綾屋さんの体験を捻じ曲げることだけは嫌だった。あくまで綾屋さんの体験を詳かにして共有するのが目的であって、綾屋さんがアスペルガー症候群であることを厳密に証明するのが目的ではないからだ。(p192)

・脳性まひは身体の動きに障害があるため、「見える障害」だとだれもが思う。見てすぐにわかる障害なので、できないことがあるだろうという察しはつきやすい。しかし実は、間身体性不全によって心理感覚の共有を得られないという、心理的で、「見えない障害」も内在しているとしたら、これは人間のコミュニケーションを考えたときに、重視すべき大きな障害だといえよう。(p212)

・健常者と障害者はスペクトラムであり、障害者のなかもまたスペクトラムになっている。そんな人びととの連続性の世界のなかで、同じであることを強要するでもなく、差異をことさらにあげつらうでもなく、多様な人びとが多様なままつながりあえば、と思う。(p218)

今日からできる小さなステップ

・自分の「まじで!ありえないし!」って思うできごとを思いだしてみる

・相手とのもやもやしたことについてメモをすることで言語化してみる

・わかりあえないことにいちいち気にしない

1行まとめ

他者と共に生きる社会とはお互いを知り、理解し、学び続けることである

今日の息子くん

ついに、公園も開放を少しづつしてきました。

今週からは図書館の貸し出しもまた再開するようです。

うちの3歳児もうれしくてジャンプしてました。

しかし、その反面新型コロナの第2波は確実にきています。

うちの職場でも今までの警戒態勢を下げましたが、またすぐに戻るのではないか内心ひやひやしてます。

新型コロナの撲滅はどうやらそう簡単にはできそうにないです。

気を緩めずに、しかし日々のストレスや不安を少しでも解消できるようなことを心がけていきたいです。

本当だったら来週から大井川鉄道でトーマスに乗る予定でしたが、また次回機会を見つけてトライしてみたいと思います。

ABOUT ME
パパdeナース@オペ室
2013年入職よりずっとオペ室で看護師してます。メンズナースです。男の子の親でもあります。主に仕事や育児についての読書ブログ書いてます。
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