介護保険制度が制定されて早20年。これまで何回もの制度の改定がなされてきた。しかし、利用者は本当に求めているサービスは受けられているのだろうか。制度の中で浮かび上がる様々な問題を取り上げ、いかにより良い政策を作り出せるか。各専門家たちがこれからの福祉社会について論じる一冊。
本の紹介
普段オペ室で働いているヒラの看護師の自分にとって、介護保険についての話はあまりにも遠い話だ。実際に患者さんに対し、介護保険の話をしたことは一度もなく、医師や周りのスタッフとも同様にしたことはない。
この本を手にしたとき、
「『ニーズ中心』って利用者のことでしょ、そんなの当たり前じゃん、、、」と思ったがそんな単純な話ではなかった。(笑)
この本は、『理念』『ニーズとサービス』『事業』『制度』『アクション』の項目ごとにより良い介護保険制度について論じていく。
この本を攻略するポイントしては、全てを読みこなすというよりは自分の興味をあるものをかいつまんでいくというのが良さそうだ。
とりわけぼくは“理念”(第1章)について語っていくこととする。
まず最初にそもそも”ケア”ってなあに、という問いに対して
「もっとも包括的な定義」として
依存的な存在である成人または子どもの身体的かつ情緒的なニーズを、それが担われ、遂行される規範的・経済的・社会的枠組みのもとにおいて、満たすことに関わる行為と関係。 (メアリー・デイリーら)
と述べられている。
とても固い文章で書かれているが、それを本書では以下のように定義して話は進むのである。
「❶他者のニーズを満たすサービスの、❷受け手と与え手という複数の行為者のあいだの、❸非対称的な相互行為」である
つまりは要約すると
1、ニーズの中心性 2、相互行為性 3、非対称性
にまとめられるのである。それぞれ問題点を簡単にではあるが説明していくとする。
1、ニーズの中心性ついて
実際に介護保険制度を利用する人のことを指す。ただ、往々にして介護保険サービスを受ける人と購入する人が違うことがほとんど。(購入者は家族であることが多い)そのため、本人の意志とは反した決定が下されることがしばしば起きている現状がある。
2、相互行為性とは
ケアとは受ける側と与える側が存在し、一方のみであることはありえない。それにより、ただ与えるだけでも受け取る側のニーズが満たされることがなく、受け取る側も与える相手によってはニーズを損なうこともしばしば。
3、非対称性とは
ケアを与える側と受け取る側は決して平等な立場ではありえない。実際にはケアを与える側(介護士)が一方的に受けてる側(利用者)にケアを押しつけているイメージが強く、受け取る側の多くは自主性があまりになく、自体が改善されない。
ということが挙げられる。
上野氏は最も問題であるのは高齢者(介護保険制度利用者)の当事者意識の欠如を挙げている。
「当事者になる」ことは、自らニーズの主体となり、社会がそれを満たす責任を要求するクレイム申し立て活動と不可分である。いまだ存在していないニーズを生成し、顕在化させるプロセスは、どういう社会がのぞましいか、という社会構想力をともなう創造的な過程である。それには、規範的、政治的な選択が関わってくる。「ニーズ中心」という本書の立場は、そのための理論的基礎を提供することを目的としている。
今こそ利用者である高齢者は声を上げるべきだ、と。
それをしないでは先に進めない。
当事者が求めているものことが正真正銘のニーズであるのだから。
あと、もう一つ課題として考えたのは介護士(本文ではケアワーカー)の職場環境である。
当事者のニーズを尊重するには、ケアワーカーのニーズもまた尊重されなければならない。
ケアという仕事が事業者にとってワーカーにとっても、持続可能な「まっとうな仕事」になるためには、ケアワークの報酬と社会的評価がもっと高くなる必要がある。
これはもっともであると感じた。これだけ、介護施設を必要としている高齢者がいるにもかかわらず一向に介護職の人材が増えないのは、給料があまりに低いことやそれに伴う社会的な立場が弱いからではないかなと。
正直、自分だったら介護士はしたくない。あまりに労働環境が過酷である。
以上のことを挙げると2点である
・高齢者は今こそ己の主権を強く主張せよ!
・ケアワーカーの労働環境を向上させよ!
これらのことを理想論だと思う人もいるだろう。
ただ、これを読み行動することで事態は少しでも改善していくのではないだろうか。
まとまりがないのだが以上のことを一看護師として読むことができた。
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