50歳でレビー小体認知症と診断された氏の日常に起こる症状とそれを取り巻く環境についての体験記である。外見だけでは症状はわからないため医療者にも誤解されてしまうこともあるという。病気への理解が進むこと含め、お互いがある程度の「ヘン(変)」を許容できる社会が作られることをより切に願う1冊となっている。
本の紹介
氏はレビー小体型認知症の診断50歳で受けた。
レビー小体型認知症とは
認知症の一つであり、一般的な認知症は記憶力や理解力などの認知機能が徐々に低下していきますが、レビー小体型認知症は認知機能が良い時と悪いときが波のように変化します。しっかりしているときもあるため「病気」と思われないこともあります。また、初期では認知機能の低下が目立たない場合もあります。症状としては多岐であり、認知機能の低下、幻視、自律神経症状、パーキンソン症状、抑うつ症状、認知の変動、睡眠時の異常行動などが挙げられ、これらは個人によって多く異なることもこの認知症の特徴です。
日本メジフィジックス株式会社www.nmp.co.jp より引用
なかなか厄介な病気である。
実際に氏はレビー小体型認知症と診断を受けるまでにうつ病であるとして誤った診断がされたため治療が悪化した経緯がある。
実際のところ、五感のすべてに異常が起こることは、医療者である自分もはじめて知ったのである。
本書から氏の体験した数々のエピソードの中からの抜粋であるが
●41℃のお風呂に入ったにもかかわらず、体がとても冷たいと感じた。
●料理が大好きだったのに急に匂いが全く感じることができなくなった。
●今が何月何日なのか、今何時なのかわからなくなることがある。
などなど。
読んでいる分に愉しいが、ちょっと想像力を働かせ自分事に置き換えたらまさにホラーである。
この心理状況で自分は正しく理性を働かせて生きていけるか不安になるレベルだ。
さらに追い討ちをかけるように周囲の無理解もとても辛く感じる。
本当の孤立とはこのような事であるのではないか。
自分がしていることも自信が持てず、現状を一番わかってほしい家族や医療者からの無理解。
ただ他にもこう述べている。
私たちを社会から切り離すのは単純な無知や根拠のない偏見ではなく、専門家の冷酷な解説だと私は感じました。それは病気の症状そのものよりもずっと重いものでした。これは人災だと、私は思いました。そして人災であれば変えることができると。
(中略)誰もがどこかヘンなままで苦しむことなくそのままに生きられたらいいなと強く強く願っています。
ちょっとばかりの間違いや失敗や脳の誤作動だって誰にだってある。それを許容できる社会ができればもっとみんなよりよく生きられるのではないだろうか。
氏の病気を通しての願いをとても強く感じた。
これぞ、当事者研究の真髄である本である。
医療従事者並びにこのレビー小体型認知症に興味をもつすべての人に読むことを薦めたい。
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