漢方って何ですか、という問いから始まり氏の大切にしている患者との向き合い方・接し方を通して東洋医学の醍醐味が十二分に書かれている。西洋医学への敬意も含めつつ東洋医学の可能性を探求していく。東洋医学の不思議さ、おもしろさが濃縮された入門書である。
本の紹介
漢方って聞いて全く興味がわかなかった。
それもそのはずでそもそもオペ室に漢方を使うという選択肢がないのである。
オペでよく使う薬の本とか読んでも漢字の薬なんて見たことないし、、、
恥ずかしながら自分の知っている漢方は”葛根湯”しかない。
風邪のひき始めに飲むやつである。
そんなわけで漢方との接点のないまま生きてきた。
で、この本を読むのである。
漢方の特徴(本書より抜粋)
・ただちに命にかかわる事態には不向き
・使用すると少なくとも患者が満足する程度には症状が改善する
・西洋医学より安全で副作用が少ない
・長期間連用しても問題が少ない
・発生機序よりも本質的な部分にも効果を及ぼす可能性がある
本書に、腹水の症状のある患者が漢方薬を処方されたことで利尿効果があらわれ、清々しい気持ちになった、という話がとても印象的であった。
それを読んで、2つのことに驚いた。
1つは漢方薬を飲んで清々しい気分になることってあるんだ、ということ。
2つ目は漢方薬の作用機序って未解明である。
とくに2つ目に関してはとても興味深かった。
氏は患者に処方した漢方薬が2週間して効かなければ違うものに変更するとのことであった。また、その効果が本当にその漢方薬によるものであるかは不確かであることがある、とのことであった。
漢方とはとても奥深いものである。
そもそも東洋医学ってなかなか曖昧である。
漢方の薬物療法の他にも鍼・灸によるものも含まれる。
鍼・灸も治療のメガニズムはまだ解明されていない。
多くの問題は「気」という東洋独自の概念なのではないかと考えられる。
本書では「気」については詳しく取り上げられていないがこれが科学的に証明されるようになればゆくゆく東洋医学の神秘はより明確になっていくと思う。
ただ僕自身、この東洋医学の不明確さ、曖昧さが不思議と心地よく感じるのである。
未解明であるがゆえのおおらかさであり、泰然とする医学がそこにある。
大きな広がりと多様性を持った学問という認識を持ったのである。
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