精神科医、批評家である斎藤環氏と歴史学者で自身もうつ病であった与那覇潤氏による対話形式で綴られた本である。身近なテーマである、ともだち、家族、お金、勝ち組・負け組、AI等について様々な角度から現代の人びとが抱えている悩みについて語り合う。本書では、お互いがもっと話し合い、尊重し、認め合うことが大切であることの重要性を伝えている。まさに精神栄養剤となる1冊となっている。
本の紹介
この本のテーマはずばり『対話』である。
ここでの対話とは、お互いがお互いの尊厳を否定せず、その上で関係性を作っていこうとする優しさがあふれる本となっている。
本書では対話とは一見ムダのようにみえるが、実はそのムダがとても重要でそこではじめてケアをされている感覚を当事者が得られることができる、と書かれている。
このような対話はもっと重要視されてもいいと感じる。
診療報酬での観点からも今後注目が集まってほしいと期待している。
この分野はAIでは決して代替できないものであり、今後の医療の核になると考える。
そして心の病気は社会でおかれている環境で決まる、とも書かれている。
2つあり、1つは本人が苦しさを感じるか、もう1つは周囲が問題視しているか。
大事なことは周囲が心の病気を問題視できる度量・見識をどのように培っていくのか。
そこで、重要な言葉として、ポリフォニー(多声性)という「他者の他者性」を理解することの必要性を説いている。
つまりは、相手の意見・行為が自分とは決して同じものではないという前提の元でお互いを認め合い、尊重していくことが大切なのである。
結局は自分の感情や内面には「他人」が折りたたまれて入っているからどんな人でも周囲の人とともにしか変わることができない。周囲の人と通じて少しでも前よりも楽な関係性を対話を通じてしていこう、というのがこの本を大筋である。
最後に心療内科・精神科等に行く際に注意してほしいポイントが1つある。
それはその医者があなたをちゃんとみてくれるかどうかである。
以下のことがあればそれは悪い医者である、と書かれている。
「自分(医者)のよって立つ理屈のとおりにならない」ことであなたを責め出すかどうか。
これがYESであればそれはもう悪い医者である。その医者はあなたとの対話を放棄している。気をつけよう。
と警告してくれる。