こんにちは、パパでナースです。
今回は【挿管困難の危険因子】についてお話していきます。
気道管理は麻酔や救急医療の基本であり、挿管困難は患者の安全に大きな影響を与える可能性があります。
挿管困難の原因は多岐にわたり、解剖学的要因から患者の一般状態までさまざまな要素が関与します。
本記事では、挿管困難の原因と対処法、そして麻酔前の気道評価の重要性について解説します。
Contents
1,挿管困難とは何か
挿管困難とは、気道の確保が困難である状況を指します。これには、予測できる挿管困難と予測できない挿管困難があります。
挿管困難は、患者の解剖学的特徴、病態、技術的問題などが原因で発生します。
発生状況
フェイスマスク換気困難の発生率は1.4~5.0%、換気不能の発生率は0.07~0.16%である。気管挿管困難の発生率は5~8%、気管挿管失敗の発生率は0.05~0.35%である。
ビデオ喉頭鏡を用いた気管挿管の成功率は全体で97.1~99.6%、difficult airway が予測される場合は95.8~100%である。
産科における気管挿管失敗の発生率は0.15~0.6%であり、気管挿管失敗による母体の死亡率は、一般人の約4倍とされている。
(Management of the Difficult Airway. N Engl J Med 2021;384:1836-47.)
口腔内の狭い空間や頸椎の変形、腫瘍などが挿管困難の原因となることがあります。
予測できる挿管困難は、事前に気道評価を行うことで判明するもので、予測できない挿管困難は、予期せぬ状況や緊急事態で発生します。
予測できる挿管困難の例としては、顔面外傷や口腔内の腫瘍が挙げられます。一方、予測できない挿管困難の例としては、アレルギー反応や出血などがあります。
挿管の目的と重要性
挿管の主な目的は、麻酔や人工呼吸の際に気道を確保し、緊急時に迅速に対応できるようにすることです。
挿管は、麻酔中に意識を失った患者の呼吸を維持し、緊急時には酸素を確保するために必要です。
また、気道の確保は、低酸素血症や窒息のリスクを減らすためにも重要です。
手術中に患者が呼吸困難に陥った場合、挿管を行うことで迅速に人工呼吸を開始し、患者の命を救うことができます。
麻酔や人工呼吸
挿管は、麻酔や人工呼吸の際に患者の気道を確保するために行われます。
麻酔中に患者は意識を失い、自然な呼吸が困難になることがあります。
そのため、挿管を行い人工呼吸を開始することで、患者の酸素供給を維持し、安全な手術環境を確保します。
開心術や脳神経外科手術などの長時間にわたる手術では、挿管によって人工呼吸が行われ、患者の酸素供給が維持されます。
2,挿管困難の原因: 解剖学的な要因
解剖学的な要因
結論: 挿管困難は、先天性異常、後天性変化、顔面や頸部の外傷、感染性疾患や腫瘍による障害などの解剖学的要因が原因となることが多い。
解剖学的要因によって気道構造が変化し、気道確保が困難になる可能性があるため。
術前の気道評価
麻酔前の気道評価は、患者の安全確保に不可欠であり、様々な気道管理手技の難易度やリスクを評価する必要があります。
Kheterpalモデルは、12の危険因子に基づいてマスク換気困難と気管挿管困難の予測を行い、麻酔導入方法や気道確保器具の選択に役立ちますが、最終判断は個々の患者の状況を考慮して行うべきです。
術前評価項目(12の危険因子)
● マランパチ Ⅲ or Ⅳ
● 頚部放射線後、頚部腫瘤
● 男性
● 短い甲状オトガイ間距離
● 歯牙の存在
● Body Mass Index 30 kg/m2 以上
● 46 歳以上
● アゴひげの存在
● 太い首
● 睡眠時無呼吸の診断
● 頚椎の不安定性や可動制限
● 下顎の前方移動制限
気道管理手技の難易度とリスク評価
Kheterpalモデルを用いた危険因子の予測
個々の患者の状況を考慮した最終判断
Q&A
Q1: なぜ解剖学的要因が挿管困難の原因となるのですか?
A1: 解剖学的要因が挿管困難の原因となるのは、先天性異常、後天性変化、顔面や頸部の外傷、感染性疾患や腫瘍による障害などが気道構造に影響を与え、気道確保が困難になる可能性があるからです。
Q2: 肥満が挿管困難に関連する理由は何ですか?
A2: 肥満が挿管困難に関連する理由は、肥満患者では頸部の脂肪の蓄積により気道確保が困難になることがあるためです。
特に、BMI 30 kg/m2 以上の患者は挿管困難のリスクが高まります。
Q3: 妊娠中の女性が挿管困難になる可能性がある理由は何ですか?
A3: 妊娠中の女性が挿管困難になる可能性がある理由は、妊娠に伴う生理的変化(例:上気道粘膜の浮腫、胃内容物逆流のリスク増加)により、気道確保が困難になることがあるからです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
挿管困難への対処は、麻酔や救急医療の現場で患者の安全を確保するために欠かせません。
本記事で紹介した原因や対策は、医療従事者の皆様が日々の業務で適切な判断と対応を行うための一助となることを願っています。
挿管困難の予測と対策を理解し、適切な気道評価を行うことで、患者の安全を最優先に考えた医療が実現できます。
これからも、患者の命を守り、信頼される医療従事者として、知識と技術の向上に努めましょう。
参考文献
日本麻酔科学会、日本麻酔科学会気道管理ガイドライン 2014(日本語訳)、より安全な麻酔導入のために
周術期管理チームテキスト