氏がフィールドワークを行った沖縄は臨床心理学とはひと味も二味も異なる世界。天使と会話する精神科医、前世をほぐすマッサージ師、ユタなど怪しいヒーラー(癒しを与える人)たちを沖縄シャーマニズムとまとめると数多くの流派が存在する。野の医者(怪しいヒーラー)という肩書や経歴を持たない人たちが行う、人を癒すこととは何であるのかを探る。
本の紹介
なんかとんでもない本を読んでしまった感覚に襲われている。
新興宗教を潜入してみたという臨床心理士によるルポといったところか。
めちゃくちゃ面白い。
「心の治療」とはなんなのか。
印象的だったのは
「野の医者はいまだ病んでいて癒しを求めている。病むことを生き方にした人である。」
という一文ですある。
野の医者のバックグランドがあまりに酷似している。
10代で結婚、妊娠、離婚を経験し、身体共にボロボロになり怪しい新興宗教に染まっていく。(女性が多い)
私は新興宗教というのは怪しいし、そんなものにハマるのは愚かであると考えていたが何やらちょっと違うのかもしれない。
そもそもその人にとって何が心の治癒なのか治療法によっても違うし、そもそも癒しとはひとつではないのである。
「私たちは今、軽薄でないと、息苦しい時代に生きている。だから軽薄なものに癒しになる。」
言い得て妙である。
心の治療にもトレンドがあるのである。
そして、心の治療とはクライアントをそれぞれの治療法の価値観へと巻き込んでいく営みである。
野の医者は相手に癒しを与えることで自らも癒しを相手から受け取っているのである。
これはまさに『ケア』ではないか。
お互いがあって初めて生まれる化学反応。
心とはとても複雑であり実体のないものである。
その中でその病める心を癒すことの難しさを感じた。
信じるものは救われるではないが、それこそ心理というものは一筋縄ではいかないものだ。
有象無象にひしめくこのセラピーの宗派が今どのような立ち位置にあるのかを俯瞰する上でとても面白い本であった。
ミルミルイッテンシューチュー