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書評022冊『驚きの介護民俗学』六車由実(2012) 

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民俗学者である氏が大学の准教授を辞め、行き着いた先はなんと介護施設であった。利用者との関わり(本文では聞き書きという)を通して氏の意図と反する予想外の人々の生活史に立ち会う。介護施設は民俗学の宝庫なのである。

本の紹介文 

介護民俗学?

初めて目にした言葉であったが、それもそのはずでこれは氏の造語である。

つまりは民俗学の視点を通して介護施設の利用者の生活史を覗いてみよう、というコンセプトである。

ぼくは看護師してて働く上で今まで民俗学なんて1ミリも頭をよぎったことがなかった。

氏によれば介護施設は民俗学ととても相性がいいという。

一体どういうことなのか?

そもそも民俗学とは

民間伝承の調査を通して、主として一般庶民の生活・文化の発展の歴史を研究する学問。英国に起こり、日本では柳田國男・折口信夫らにより体系づけられた。(デジタル大辞泉)

つまりは、高齢の方がいる環境で色々と話ができる場であることが挙げられると書かれている。

あと、本のタイトルの驚きのというワードがある。

驚きのとは、基本的に介護施設には介護が必要な方が利用するという共通項があるだけで、経歴や出自などは関係ないため、必然的に個々のバラエティを富む人生経験を聞くことができるという意味である。

なるほどなー。

ぼく自身としては、よく術前訪問(=手術前の看護師が患者さんに向けた説明)に行くときには一度聞いた質問に対して、長々と話し出し、結局答えをいただけないケースがよくある。

そのような場合は、手短に説明を済ませてさっさとその場を退出することを何度がしたことがある。

自分もまがりなりも看護師として働いていることは自覚しつつも、患者さんの話に対してできる限り傾聴しようという意識は少なからずある。

しかし、である。

時間がないのである。

これは言い訳にしか聞こえないと思うのであるが。

とにかく看護師は忙しい。

ここにこの本は一石を投じていると思う。

忙しくて話が聞けない、もっとそばにいたい。

多くの看護師は思っている。

患者は特に高齢で長く入院している方など話したくて仕方ないのである。

そのような方に対応する氏のような民俗学者が各施設・病院にいるとしたら

ひょっとすると日本の民俗学へ貢献度と利用者の満足度も上がることは間違いない。

また本文では、氏は自分史を書くことを薦めている。

自分史を書くこと、活字にすることで客観的に読み手に自身の生い立ちを理解することができるからであると。

もし、個々人が自分史を持っているとしたならば、その情報より患者さんの信念・生き様というのを知ることが最良の看護を患者さんに提供できる。

ただ、一つ問題はあってその自分史をおいそれと看護師に見せるのかということだ。

、、、自分だったら見せるのにちょっと抵抗があるなー。

現在の超高齢社会で介護施設での利用者と介護者の両方にとって有益になる、参考になる本だと思った。

 

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今日からできる小さなステップ

特に高齢の患者さんと話をするときにはその患者さんの背景にある信念・理念・生き方についてどのようなことがあるのかを考えて傾聴する。

1行まとめ

介護施設は民俗学の宝庫だ。

この本でビビッときた文章

・「介護民俗学」などという分野があったわけではないし、ましてやそんな言葉だってなかった、私自身の反省でもあるが、民俗学にとって、介護の現場は関心の外だったのである。(p5

・介護現場での「テーマなき聞き書き」は、民俗研究者としても、介護者としても、そして何よりも一人の人間としても、さまざま経験を踏んで生きてきた利用者の人生そのものに触れることができる至福の時間なのである。(p19

・老人ホームは、まさに「民俗学の宝庫」なのであり、聞き書きの可能性は無限大に広がっていく。(p 39

・私は、利用者への聞き書きにいつも「驚き」を感じる。話の展開のなかでこれまで聞いたことがないような職業の経験者であることがわかったり、こちらが予想もしなかった人生を背負って生きてこられた方であることを知ったり、あるいは、利用者がふと見せる行動にその方の生活史ばかりではなく時代が見えてきたりする。(p 151

・つまりケアや介護とは、まさに上野が定義づけるように「ケアする側とケアされる側との相互行為」なのであり、どちらか一方に属するものではないのである。だから、ある職員と利用者とのあいだで成り立った介助の方法が、他の職員と利用者とのあいだでもうまく行くとは限らない。むしろ、それぞれの関係性のなかで、よりよいケアを模索する必要があるのである。(p 221

・そして何よりも、本書で繰り返し強調してきたように、高齢者介護の現場、特に老人ホーム等の施設は、民俗学的関心を持った者にとっては実に魅力的だからである。(p 223

 

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ABOUT ME
パパdeナース@オペ室
2013年入職よりずっとオペ室で看護師してます。メンズナースです。男の子の親でもあります。主に仕事や育児についての読書ブログ書いてます。
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