こんにちは、パパでナースです。
今回は【PONV】についてお話していきます。
術後悪心・嘔吐(PONV)は、多くの患者さんが抱える大きな悩みで、リカバリー時間や入院期間が延長される可能性もあります。
この記事では、術後悪心・嘔吐の原因やメカニズム、リスク因子、予防法、治療法についてわかりやすく解説しています。
特にApfelスコアを用いたリスク評価や適切な対策が患者さんの満足度や回復を大きく向上させることができます。
この記事を参考に、術後の不安やストレスを軽減し、より安心して手術を受けられるようになりましょう。
Contents
術後悪心・嘔吐(PONV)とは
術後悪心・嘔吐(PONV)は、術後の患者全体の30%、高リスク群では80%に発症する問題で、患者の満足度を低下させ、リカバリー時間や入院期間の延長を引き起こす可能性があります。
悪心・嘔吐は、嘔吐中枢が刺激されることで引き起こされるとされ、化学受容器が直接刺激される経路や、消化管からのセロトニン分泌などが関与しています。
PONVのリスク因子には、女性、既往歴、非喫煙者、若年者、胆囊摘出手術や婦人科手術、腹腔鏡手術、全身麻酔、吸入麻酔、亜酸化窒素の使用、術後のオピオイド使用、長時間の麻酔が含まれます。
リスク評価のためにApfelスコアが推奨されており、リスクが高まるにつれてPONVの発症リスクも高まります。
ベースラインリスク軽減対策
以下の点があげられます。
全身麻酔を避けて区域麻酔を選択
プロポフォールで導入維持
亜酸化窒素を避ける
吸入麻酔薬を避ける
術中術後のオピオイド使用を最小限にする
十分な輸液を行うなど
そして治療法としては、予防を行っていない患者でPONVが起きた場合、オンダンセトロンなどが使用されます。
予防対策を施してPONVが発生した場合は、予防投与で使用されていない異なる機序の薬物で治療が推奨されています。
PONVの予防薬
一般名「グラニセトロン塩酸塩」と「オンダンセトロン塩酸塩水和物」は、それぞれ販売名「カイトリル」と「オンダンセトロン注4mg シリンジ」で市販されています。
どちらも術後の消化器症状(悪心、嘔吐)に効果があり、用法・用量は成人・小児ともに年齢や症状に応じて適宜増減されます。
具体的には、「カイトリル」は成人に1回1mgを静注または点滴静注し、1日最大3mgまで、「オンダンセトロン注」は成人に1回4mg、小児に1回0.05~0.1mg/kg(最大4mg)を緩徐に静脈内投与します。
まとめ
術後悪心・嘔吐(PONV)は、多くの患者に影響を及ぼし、リスク要因やリスク軽減対策、予防法、治療法が重要です。
リスク評価にはApfelスコアが使用され、リスク軽減対策としては、麻酔の選択や使用薬物の変更などが挙げられます。
予防法には、さまざまな薬物が用いられ、特にオンダンセトロン・グラニセトロンが日本では2022年に保険適用となりました。
Apfelスコアとはなんですか。
Apfelスコアは、術後悪心・嘔吐(PONV: postoperative nausea and vomiting)の発症リスクを評価するために使用されるスコアです。
このスコアは、4つの主要なリスク因子に基づいています。これらのリスク因子は以下の通りです。
女性
非喫煙者
PONVや乗り物酔いの既往歴がある
術後のオピオイド使用
これらのリスク因子がそれぞれ1点としてカウントされ、合計スコアが算出されます。合計スコアに応じて、患者のPONV発症リスクが評価されます。
具体的には、スコアがゼロの場合は15%、1点なら20%、2点なら40%、3点なら60%、4点すべてのリスク因子がある場合は80%となります。
このスコアに基づいて、患者のリスクレベルを判断し、適切な予防策や治療法が選択されます。
まとめ
術後悪心・嘔吐(PONV)は患者にストレスを与える問題で、リスク評価にApfelスコアが用いられます。適切な予防・治療法を選択することが重要です。
重要な部分:
PONVは術後のストレス要因
Apfelスコアによるリスク評価
リスクに応じた予防・治療法の選択
Q&A
Q1: 術後悪心・嘔吐(PONV)はどのくらいの割合の患者に発症しますか?
A1: PONVは術後患者全体の約30%に発症し、高リスク群では最大80%に発症することがあります。
Q2: Apfelスコアは何を評価するためのスコアですか?
A2: Apfelスコアは、術後悪心・嘔吐(PONV)の発症リスクを評価するために使用されるスコアです。4つの主要なリスク因子(女性、非喫煙者、PONVや乗り物酔いの既往歴、術後のオピオイド使用)に基づいてリスクが算出されます。
Q3: PONVの予防・治療法にはどのようなものがありますか?
A3: PONVの予防・治療法には、リスク因子に応じて選択される薬物(5-HT3拮抗薬、ドパミン拮抗薬、ブタンキライザー、メトクロプラミド、スコポラミン、デキサメタゾンなど)や、ベースラインリスク軽減対策(全身麻酔の避け、プロポフォール導入維持、亜酸化窒素の回避、吸入麻酔薬の回避、術中術後のオピオイド使用制限、十分な輸液など)があります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
術後悪心・嘔吐は、患者さんにとって大きな心的ストレスとなる問題ですが、この記事を通して、そのメカニズムやリスク因子、予防法、治療法について理解を深めることができました。
Apfelスコアを活用し、適切な対策を講じることで、術後の不安やストレスを最小限に抑えることが可能です。
これから手術を受ける方、また術後のケアを考える医療従事者の皆さんにとって、今回の知識が大いに役立つことでしょう。
参考文献・引用文献
周術期管理チームテキスト第4版